■カラーストーンとはなにか
突然ですが、皆様はカラーストーンという言葉を聞いてそれがどのようなものか思い浮かびますか?カラーストーンを日本語にすると色石だけど、色石ってなんだろう。そのように思われる方が多いのではないかと思います。カラーストーンとはダイヤモンド以外の宝石を指す用語で、ダイヤモンドはその市場性が他の宝石と比べて圧倒的に高いこともあり、他の宝石とは区別されているのです。
■カラーストーンを扱わない宝石店
カラーストーンは取扱いの難しい宝石です。そのため近年ではダイヤモンドのみを扱う「ブライダル専門店」が増えてきているようです。ブライダルジュエリーはダイヤモンドがスタンダードですから、こういった専門店はアレンジに用いる小さなカラーストーンは例外としても、基本的にはダイヤモンドのみを提供しています。
■カラーストーンの取扱いが難しい3つの理由
なぜカラーストーンの取り扱いが難しいのか。その理由は①市場性が低く、②全ての石が唯一無二で、質の良し悪しを自らの目で見定めなければならず③質の良い石を仕入れるためには海外の宝石集積地まで足を伸ばさなければならないからです。
①市場性の低さ
この点に関しては、普段宝石と関わりのない方のほうがピンとくるのではないでしょうか。ブライダルリングに用いられるダイヤモンドは常に一定の需要が見込めますが、例えばルビーやエメラルドではそのようには行きません。普段使いのアクセサリーにしても、何にでも合わせやすいからという理由で無色のダイヤモンドが最も選ばれやすいのは自然なこと。それでは没個性的だからもっと自分を表現できる宝石が欲しいとおっしゃる方は上級者に限られます。
②全ての石が唯一無二
本来はカラーストーンに限らずダイヤモンドにも当てはまる事柄です。宝石は地球が生み出したものですから、この世に二つとして同じものがないのが道理でしょう。ところが、ダイヤモンドは4C(Carat, Clarity, Color, Cut)という統一された基準によって品質が可視化できるため、鑑定書上は同じ品質のものがいくつも存在することになります。これにより、ひとつひとつの石を見ずとも、同じ品質のダイヤモンドを大量に揃えることが可能となるのです。
カラーストーンはこうはいきません。鑑定書が存在しないからです。カラーストーンに対して宝石の専門機関が発行するのは「鑑別書」と呼ばれるものであり、ここに質の良し悪しというのものは記されておりません。4Cのように統一された基準が存在しないため、良し悪しをジャッジしようがないのです。鑑別書に書かれているのは主に、その宝石が本物かどうか、人工的な処理が行われているかどうか、行われているとしたらそれはどのようなものか、といった項目になります。品質そのものに関しては記載がないため、仕入れを行う宝石商は自らの鑑定眼だけが頼りとなるのです。
③海外での買付けが必要
この理由は単純明快。日本にカラーストーンが集まってこないからです。先に述べた通り、日本ではダイヤモンド以外の市場性が低いため、これは致し方のないこと。SINDBADが足を運ぶ海外の主要な宝石集積地と言えば、サファイアやルビーが採れて、研磨のクオリティにも定評があるタイ、インド洋の宝石箱との呼び名高いスリランカ、アジア・マネーが集まる香港等が挙げられます。これらは皆アジアの国々ですが、エメラルドや希少石であるパライバトルマリンを仕入れようと思ったら、地球の反対側にあるブラジルやコロンビアまで行かなければなりません。こういった国々まで出向き、現地を根城にしている海千山千の宝石ブローカーたちとの取引をまとめるのが容易でないことは想像に難くないでしょう。これらの理由により、カラーストーンを取扱うハードルは非常に高くなっているのです。
ダイヤモンドの鑑定書。4Cと呼ばれる価値基準が記されており、見ればそのダイヤモンドの価値を凡そ伺い知ることが出来る。
カラーストーンの鑑別書。当該の石が本物であることを証明してくれる。
■世界四大宝石+α
時に、世界四大宝石と呼ばれる分類がありますが、その中にはどういったものが含まれるかご存知ですか?四大と言うからにはメジャーなものを順に挙げていけばだいたい正解で、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドの4つになります。真珠を思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれませんが、真珠は世界五大宝石と言った場合の五番目の候補のひとつになります。
候補のひとつという言い方をしたのは他にも候補があるからで、中国ではダイヤモンドに代わって正妻に贈る石として古くから重宝されてきた翡翠、ロシア帝国の皇太子にちなんで名前を付けられたアレキサンドライトが名乗りをあげています。4番目までは世界共通で、どれを5番目に据えるかは国や地域によって異なっているのです。
上記の宝石のうち、日本の女性に特に馴染みがあるのはダイヤモンドと真珠でしょう。ダイヤモンドはブライダルリングとして、真珠は冠婚葬祭用にネックレスを1本持っている方が多いようです。逆に言うと、ダイヤモンドと真珠以外のジュエリーを持っているという方は稀です。ヨーロッパでは婚約指輪にルビーやサファイアを贈ることも珍しくありませんが、日本ではダイヤを除いた四大宝石は知名度の割に普及していないというのが宝石商としての実感です。
当店で取扱っているミャンマー産ルビー。脇役ながら、こういうところでもダイヤモンドは存在感を発揮している。
「キズのないエメラルドを探すのは、欠点のない人間を探すことよりも難しい」という金言があるくらい、エメラルドにはキズが多い。なるべくキズが少ないこと、そして何より色が鮮やかであることが価値判断のポイント。
スリランカ産サファイア。加熱処理を行っていない当店自慢の一品。
鑑別書に加熱処理を行っていないことが明記されており、売り手の品質担保と買い手の安心に一役買ってくれる。
■世界三大希少石
四大宝石の他に、しばしば好事家の間で俎上に上がるものとして、世界三大希少石と呼ばれる括りが存在します。アレキサンドライト、パパラチアサファイア、そしてパライバトルマリンです。アレキサンドライトは先程五大宝石の5番目の候補の一つとしてご紹介しましたが、実は三大希少石の座も占めているのです。太陽光下では緑だった色が人工灯下では赤に変わる「変色効果」という極めて稀有な質を持ち、世界の宝石マニアから珍重されています。
パパラチアサファイア
パパラチアサファイアは桃色と橙色の中間色を持ったサファイアで、様々なカラーバリエーションが存在するサファイアの中でも格別の扱いを受けています。パパラチアサファイアはベリリウム拡散処理という手法で人工的に色を付けた贋物が大量に出回った時期があったため、購入に際しては注意が必要です。また、「桃色と橙色の中間色」という定義も主観では判断がつきにくいため、鑑別書の付いているものを選ぶことをお勧めします。ついでながら、パパラチアとは原産国であるスリランカのシンハラ語で蓮の花を意味する言葉です。極楽浄土に咲く花の名前を付けるとは仏教国らしいですね。
パライバトルマリン
最後にパライバトルマリンについて触れます。これはネオンカラーと呼ばれる、やもすれば人工的にすら感じられるほど強烈な青と緑が混じった色合いの宝石です。南国の海を想起させるような、最も綺麗なパライバが採掘できるブラジルの鉱山がほぼ枯渇状態となっているため、質の高いパライバは現在では滅多にお目にかかれません。21世紀に入ってからはアフリカでもパライバが採掘できるようになりましたが、色が薄いものが多く、同じパライバと言うには無理があるのではないかと、首をかしげたくような質のものも多く見受けられます。パライバは数年前にテレビで取り上げられたことも手伝って、日本での認知が広がり、人気も急激に高まっています。
ブラジル産パライバトルマリン。青から緑まで色の幅が広いパライバのなかにあって、これはかなり青が強い。既に販売済み
非加熱パパラチアサファイア。店頭に並ぶとすぐに販売済みになってしまった。
■SINDBADがカラーストーンを扱い続ける理由
いかがでしたでしょうか。この頁の前半で説明した通り、カラーストーンは扱いが難しい宝石です。商売の成功だけを考えれば、当店もダイヤモンドだけに特化したブライダルジュエリー専門店に舵を切るべきなのかもしれません。ですが、SINDBADがカラーストーンの取扱いを諦めることはありません。それは、他店が扱わないからこそ、世界を周って希少で価値のある宝石を買い付け、お客様の「欲しい」に応えることが当店の存在意義だと考えているからです。
SINDBADは、かつて店主がスリランカで名状し難いほど魅力的なサファイアに出会い、強い衝撃を受けたことから始まりました。その偶然の出会いから受けた感動を、少しでもお客様と分かち合うことが出来ればそれに勝る喜びはありません。SINDBADが世界中から買い付けたカラーストーンは、下のボタンからご覧ください。