1.ブラジルへの渡航準備

買付けに行くまでの経緯

「世界中から希少な宝石を買付けて日本で販売する」

これはSINDBADが創業以来行ってきたビジネスの根幹ですが、近年ではこのモデルを維持するのが難しくなってきました。『シンドバット』として世界に足を運んできた現在の店主が高齢になったことで、遠方の国に行くのが難しくなってきたからです。

 

一方で、「パライバトルマリン」や「サンタマリア・アクアマリン」といったブラジルで採掘される宝石は、現在お客様からの引き合いが最も多い宝石であり、これからも継続的に仕入れをしていく必要があります。

 

その仕入れ役として、今回は私が代理のシンドバットとしてブラジルに赴くことになりました。私は宝石業界ではまだまだヒヨッコで、これまでは海外に買付けに行くにしても、常に店主のお供というカタチでした。今回は店主が同行しませんが、経験豊富な同業者のFさんとご一緒させていただけるということで、店主からGOサインが出ました。ブラジルに行くにあたって、いくつかの事前準備が必要になります。

ネオンカラーが特徴のパライバトルマリン(販売済み)

航空券の手配

航空券の手配は出発の2か月半、渡航が決まってすぐに行いました。サンパウロからゴベルナドール・バラダレスまで、Fさんと同じ便に乗らなけらばならなかったからです。飛行機の座席は問題なく確保できました。ちなみに目的地は、バラダレスの空港から更に車で行ったところにあるテオフィロの街です。

Fさんと合流する前までにサンパウロに到着している必要があるため、サンパウロ行きの航空券も必要です。ブラジルは日本のちょうど真裏にあるため、東回りと西回りどちらの便もありますが、アメリカ経由の東回りのものが安かったのでそちらにしました。

南米の飛行機はよく遅れがあり、その遅れのせいで乗り継ぎに失敗する可能性があると聞いていたので、サンパウロにはFさんと合流する前日に到着するよう手配しました。

黄熱病の予防接種

南米に渡航するにあたり、かつては必須だったという黄熱病の予防接種。今では必須ではありませんが、一度罹患すると命に関わるため、受けておいた方がベターです。この予防接種が曲者でした。

まず、予約できる病院が非常に限られているのです。東京では東京免疫所や東京診療所等の5つの病院で接種できますが、7月の上旬に東京免疫所に連絡したところ、8月上旬の出発の日までに予約の空きがないという返答でした。続いて東京診療所に連絡したところ、ここでも空きがないと言われてしまいました。あきらめて電話を切ろうとした瞬間、「ちょっとまってください!今ちょうどキャンセルがあったので明日ならば空いています」と言われ事なきを得ました。

果たして次の日予防接種を受けに東京診療所に行きましたが、待合で順番を待っている間にも次々に電話がかかってきて、その度に「黄熱病の予防接種ですと今月はもう空きがありません。一番早くても……」と言っていたので、恐らく他の病院で受けることも難しかったでしょう。運に恵まれていました。

黄熱病の予防接種を受ける際、10人に1人ほどの割合で副作用がでるという説明を受けました。どうやら私はこの10人の中の1人だったようで、接種を受けて4日後に熱を出して寝込みました

予防接種を受けるとイエローカードと呼ばれる証明書が発行されます

ESTAの申請

アメリカにビザ無しで入国する際、必要になるのがESTAと呼ばれる電子渡航認証システムへの申請です。乗り継ぎで数時間立ち寄る場合でも必要ということで、14ドル払って申請しました。かつての米国大統領が「アメリカ人の本業はビジネスだ(The business of America is business」という言葉を残していますが、年間7500万人(2014年)の入国者がいることを考えれば、ESTAは米国政府にとって悪くないビジネスになっているはずです。

ビザは不要になりました

日本人がブラジルに渡航する場合、6か月以内の滞在であればビザは不要です。これは2019年の6月から施行された法案で、期せずして8月にブラジルに行くことになった私にとっては僥倖でした。

荷造り

「ブラジルに行くにあたって特別に必要になるものはありますか?」とFさんに伺ったところ、電池式の蚊取線香があるといいと答えが返ってきました。蚊を媒介にするマラリア等の感染症が怖いからです。

ブラジルは南半球にあるので、8月は冬に当たります。冬と言っても南半球の冬ですから、蚊対策が不要というわけではありません。蚊取線香と虫除けスプレーを準備し、万全を期します。

ブラジルはアマゾン地域を除けば低リスクですが、警戒は必要です(出典:厚生労働省検疫所)

この時期のブラジルは1日の中で寒暖の差が激しく、防寒対策をすると良いというのもFさんの言です。ウールのパーカーを持っていくことにしました。

こうして事前準備が整いました。次回は2.テオフィロ・オトニまでの道のりです。

SINDBADのブラジル買付紀行