5.FIPP ~宝石街のお祭り~
1年に1度、ティオフィロ・オトニに世界中から宝石商が集まる時期があります。FIPPと呼ばれる街を挙げてのお祭りが行われる期間です。FIPPは熱帯であるブラジルが最も過ごしやすくなる8月に開催されます。
FIPPの時期には街の広場で宝石の露店が立ち並びます。また、中心地から少し離れたメイン会場にもたくさんの宝石関係者が売買のために集まり、ブラジルの小さな田舎町がいっきに盛り上がります。今回の私の旅もこのFIPPの時期に合わせてのものです。
街の中心にある広場では比較的安価な商品を扱う宝石商が出店しています。メイン会場が建設される前は、業者はすべてこちらに出店していたようです。
この会場にはSINDBADで取扱うようなハイジュエリーは置いていませんでしたが、石の彫物やカジュアルジュエリー等、お土産になりそうなアイテムが目を引きます。お祭りの雰囲気を楽しむなら断然こちらの会場でしょう。
FIPPのメイン会場は広場の前からシャトルバスに乗って20分ほどの所にあります。パスポートを見せて入館証を発行してもらった後、会場に入ると中には数十のブースが立ち並んでいました。数年前まではスペースが足りず会場の外にもブースが並ぶほど賑わっていたそうですが、今年は世界的な景気の悪化で特に中国人バイヤーの数が減ったため、そこまで会場の密度が高いわけではありませんでした。
会場内ではお目当てのパライバトルマリンの裸石を見つけることができました。ところが、産地を尋ねてみるとほとんどがアフリカ産。なぜブラジルにアフリカ産のパライバが?と思われる方もいるかも知れませんが、ブラジルにはパライバ目当てのバイヤーが世界中から集まるので、そのバイヤーをターゲットにアフリカ産のパライバが持ち込まれているのです。
アフリカ産パライバと言えば最近までは青色の素になる酸化銅の含有率が低く、アクアマリンに似たクリアブルーやミントグリーンの色合いをしているものが多いと言われていました。ところが、会場には一見するとブラジル産と言われても信じてしまいそうな、青の濃いものもありました。ブラジル産に比べると価格もはるかに手頃で買おうか悩みましたが、SINDBADが顧客としているパライバの好事家の多くは、『ブラジル産』一本指定であることが多いので断念しました。
ブースを周って見ていると、「ショーケースには並べていないが、とっておきのパライバがあるんだ」と声をかけてきた業者がいました。見せられたネオンブルーの裸石はキズはやや多いものの色が良く、値段も理に適ったものでした。すぐに買いたい気持ちもありましたが、ニセモノが多いのがパライバの宿命。会場では真贋が判別できないので、一度持ち帰りとさせてもらいました。
Fさんの事務所で調べたところ、これが真っ赤なニセモノ。人造宝石である合成ベリルでした。次の日に件の業者にNO!と言って返すと(すり替えたんだろうと言いがかりをつけられる可能性があったため、ニセモノだったとは言いませんでした。)、彼はすぐさま別の買付け業者に売込みを始めました。最終的には迂闊な誰かが掴まされることになったと思います。
宝石業者以外にも、会場にはコレクションを身に着けて会場内を練り歩く背の高いモデルさんたちや、農林省の認可印が無い怪しげなプロポリスを売る業者、外国人に避妊具を配って営業活動をしている売春婦のグループ等がいて、見ていて楽しめるイベントでした。
今回でSINDBADのブラジル買付紀行はおしまいです。今後もSINDBADは世界中の宝石集積地に足を運び、希少な宝石を買付けお客様に提供してまいります。
今回買付けた宝石は順次製品化していきますので、興味がある方は下のリンクからチェックしてみてください。